新刊『人生は38歳までに差がつく!』まえがき公開!
2026-08-22 書籍

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はじめに 信じ込まされてきた7つの嘘
本書を手にとってくれて、ありがとう。
私は、はじめて「30代向け」に本を書いた。理由は、拙著『移動する人はうまくいく』がベストセラーとなり、前作『人生は28歳までに決まる』が売れ始め、
「30代向けの本は、ありませんか?」
と多くの人に聞かれるようになったからだ。
そして、彼らに会って話を聞いていくうちに、はっきりと見えてきたことがある。30代の入り口に立っている人たちは、ほぼ全員、毎日のようにこう感じている。
「以前より、生きるのが重い」
20代の頃は、もっと身軽だった。失恋してもケロッと立ち直り、仕事に飽きれば転職し、休日には何かを始めようとする気力もあった。それが30代になった瞬間、何かが変わる。月曜の朝は布団から出るのに30分かかり、週末はぐったり寝込み、日曜の夜になると、明日の会議のことを考えて胃が痛くなる。
やる気はある。やるべきこともわかっている。それなのに、動こうとするたびに、足元から何かが引っ張る。
本書を手にとってくれたあなたも、もしかして、こんな日々を過ごしていないだろうか。
世間はそれを
「30代になって、責任が増えたからだよ」
「結婚や子育てでエネルギーを取られるからだよ」
「大人になれば、みんなそんなものだよ」
と説明する。あなた自身も、薄々そう思って、自分をなんとか納得させようとしているかもしれない。
7つの嘘の正体
だが、本当にそれだけだろうか。
多くの30代と話を重ねるうちに、私のなかで、ある仮説がはっきり輪郭を持ちはじめた。
彼らは、責任に潰されているのではない。彼らは、生まれてからずっと、誰かに刷り込まれてきた「嘘」を、いまだに信じ続けているせいで、重くなっているのだ。
1つの嘘の重さは、それ単体ではたいしたことはないかもしれない。だが、これを7つ同時に背負って20年歩き続けると、どれだけ強靭な人でも、ある日、膝が砕ける。30代は、ちょうどその「膝が砕ける時期」にあたる。
その嘘は、たいていの場合、こういう形をして、私たちの心の中にいる。
――「安定した人生こそ、良い人生だ」(→第1章)
――「人生にも、テストのように正解がある」(→第2章)
――「失敗は、悪いことだ」(→第3章)
――「努力すれば、必ず報われる」(→第4章)
――「段取り八分。計画してから動け」(→第5章)
――「人生には、目標が必要だ」(→第6章)
――「変わるには、大きな決断が必要だ」(→第7章)
子どもの頃から、繰り返し聞かされてきた言葉ばかりだろう。親も、学校も、テレビも、世間も、みんなこの方向を指差してきた。あなたはそれを、空気のように吸い込んで、いつの間にか「真実」として信じ込んでいる。
だが、これらはすべて、嘘だ。
正確に言えば、20年前の社会ではある程度通用していたが、いまの30代以降の人生では、もう成り立たない。あるいは、もともと半分しか本当ではなかったものを、誰かが「全部本当だ」と広めて、私たちはそれを疑うこともなく抱え続けてきた。
これらの嘘が厄介なのは、信じている当人に、それが嘘だと気づかせない点だ。むしろ
「自分の頑張りが足りないからだ」
「自分の意志が弱いからだ」
と、当人を内側から責める方向に追い込んでくる。動けない自分を、毎日のように責める。動けない理由が、自分の中にあると思い込んでいるからだ。
真面目で、責任感が強く、努力できる人が潰れていく社会
私の周りで、30代に心身を壊していった人たちは、ほぼ全員このパターンだった。怠惰だったから壊れたのではない。むしろ真面目で、責任感が強く、努力家だった。そういう人ほど、刷り込まれた嘘を、最後まで疑わずに、忠実に守ろうとする。その忠実さが、彼らの背骨を折った。
ちがう。動けない理由は、あなたの中にはない。あなたが背負っている「嘘」の重さのほうにある。それも、自分の意思で選んだ嘘ではない。子どもの頃から、空気のように吸い込んできた、誰かに都合よく作られた嘘だ。背負ってきたのは、あなたの責任ではない。だが、降ろすかどうかは、あなたが決められる。
私が本書を書きながら、何度も聴き返してきた曲がある。ニーナ・シモンが歌う『Ain’t Got No, I Got Life』だ。1968年、もとはミュージカル『ヘアー』のなかの一曲で、彼女のカバーが世界的に知られるようになった。
歌の前半、主人公はひたすら「自分が持っていないもの」を数え上げていく。家も、お金も、愛も、信頼できる人も――世間が「持っているべきだ」と要求してくるものを、ひとつも持っていない、と。
ところが歌は、ある瞬間、問いに転じる。「では、私は何を持っているのか?」
そこから後半が始まる。主人公は、自分の身体、自分の感覚、自分の存在そのものに、ひとつずつ目を向け直していく。そしてたどり着く答えは、こうだ。
「私は、人生を持っている」
世間の正解テンプレートが要求するものを何ひとつ持たないこの主人公は、自分が本当に持っているもののほうに目を向け直した瞬間、誰よりも豊かな存在に変わる。
これが、本書を貫いている考え方だ。
「持っていないもの」を数えているかぎり、人は永遠に「足りない」と感じ続ける。「持つべきもの」のリストは、世間が刷り込んできた7つの嘘によって、無限に膨らみ続けるからだ。だが、その嘘を1つずつ降ろし、自分が本当に持っているものに目を向け直したとき、人生はもうとっくに自分の中で始まっていた、と気づける。
最善の選択ではなく、選択を最善に
もう一つ、本書を読み解く合言葉を、先に渡しておきたい。
「最善の選択ではなく、選択を最善に」
完璧な選択を探すのをやめる。自分が選んだものを、自分の手で最善にしていく。これが、本書のモットーだ。どの章から読み始めるかも、どの嘘から降ろしはじめるかも、決められた正解はない。あなたが選んだ一手を、あなた自身の手で最善にしていけばいい。
本書は、こうして30代と話し続けてきたなかで見えてきたものと、私自身が30代までに背負ってきた嘘を一つひとつ降ろしていった経験を、一冊にまとめたものだ。仕事の量を減らした。結果より、毎日の機嫌を優先するようにした。目標を立てるのをやめて、目の前のことを最善にすることに切り替えた。SNSで他人の人生を覗き見るのをやめた。完璧な段取りを諦めて、10点見えた段階で動き出すようになった。失敗しても、それを経験と呼べるようになった。
不思議なことが起きた。荷物を降ろしたら、人生が動き始めたのだ。
ハワイに移住した。スタンフォードオンラインハイスクールの星友啓校長と知り合った。教育事業に踏み出した。30代の頃に「目標」として掲げていなかったことばかりが、立て続けに人生に入ってきた。
各章で、上に挙げた7つの嘘を、一つずつ正面から解体していく。
第1章で、「安定こそ良い人生」という洗脳の正体を見抜く。
第2章で、「人生に正解がある」という幻を解く。
第3章で、「失敗してはいけない」という呪縛を、脳科学の知見を借りて外す。
第4章で、「努力すれば報われる」という神話を、サンデルとエピクテトスの言葉とともに崩す。
第5章で、「段取り八分」という常識を疑い、10点で動き出す勇気の話をする。
第6章で、「人生には目標が必要だ」という思い込みを、私自身の人生で起きた偶然の連鎖から解体する。
そして、第7章で、これまでに降ろした重荷の代わりに、明日からの30個の小さな動作を提示する。「変わるには大きな決断が必要だ」という最後の嘘を外したとき、あなたの人生はもう動き始めている。
本書を読み終えたあなたが、7つの嘘のうち、一つでも「ああ、これは嘘だったのか」と気づき、それを降ろせたなら、本書の役目は果たされる。降ろした分だけ、あなたの人生は軽くなる。
そして軽くなった分だけ、新しいものが入ってくる。今までなら通り過ぎていたチャンス、今までなら気づかなかった人、今までなら受け取れなかった偶然――それらは、嘘を降ろしたあなたの隙間に、自然と入ってくる。これは、私自身の40代以降の人生で、何度も繰り返し起きてきた現象だ。
全部を一気に降ろす必要はない。むしろ、全部を一気にやろうとした瞬間、また別の嘘――「全部、完璧にやらなければいけない」――に絡め取られる。1つ降ろして、また1つ。それで十分だ。
人生は、38歳から、もう一度始まる。
正確に言えば、38歳までに背負ってきた嘘を降ろしたあなたの人生が、ここから始まる。
それでは、最初の嘘から、見ていこう。
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